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まだだ、まだ町を抜けてない。
短い手足で駆け抜けるには、俺にはこの町すら広すぎる。
それすら悔して、俺の怒りは膨らんでいくばかりだった。
普段はこんな不自由を感じていない分、一度にこうしてドカンと来るものなのかな。
いつも小さな不平不満を口にする友達に“一体何がそんなに不満なんだよ”とこっそり思っていた罰なのかな。
優越感のつもりじゃなかったけど、それでも駄目だったのかな。
疑問ばかりが頭をもたげて、俺はすっかり混乱し始めていた。
岐路に出る度どちらに行くか迷って、ハアハアと全身で息をする。それすら情けない。
もう、最初の原因が何だったかすら忘れてしまいそうな程、走って走って──。
俺は、見たこともない公園に足を踏み入れていた。
咄嗟に曲がり角がある、と思ったんだ。
近所の大きなグラウンドのある公園とは、大違いだ。
枯れかけの生垣が生い茂りすぎて、入り口を危うく見過ごすところだった。
こんな公園知らない。来たこともない。薄暗い公園で立ち止まり、喉が切れてしまいそうな程ゼエゼエと呼吸を繰り返す。
痛い。
喉が一番痛いけど、足元が悪かったせいで何度かひねりかけた足首もちょっと痛いし、ずっと力いっぱい振っていた腕も痛いような。
全身はもうとっくにびしょ濡れで、気持ち悪かった。
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