僕というものをさだめられた日。-Refrain-

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   何で自分はこんなところまで走ってきたんだろう……と考えた瞬間、あの嘘つき女の自分に酔ったしたり顔を思い出して、吐き気がした。  ヤバイ。忘れることができた──と一瞬思ったけど、やっぱりすぐに思い出せるじゃないか。  泣きたい気持ちはすぐに戻ってきて、俺はふるふると肩を震わせる。 「……ばかやろう」  ふと口をついて、言葉がほとばしる。  それは、俺が口にするだけで母さんが叱りに来る言葉。  TVを見てれば、みんな普通に言ってる。だけど何となくその響きが気に入って口にした時、母さんはひどく悲しげな顔をして“そんな言葉口にしちゃ駄目”と厳しい口調で言うのだ。  だから、学校でみんなが言ってても俺だけは言わないようにしてた──けど。  今なら、言える。今なら、言ってもいい。  だって誰も聞いてないし、誰も母さんに告げ口したりしない。 「ばかやろう、ばかやろうっ」  我慢していた分堰を切ったように、感情と共に言葉が爆発する。  涙がぽろぽろとこぼれてきて、その熱い怒りの滴が冷たい雨で流れていくのが心地よかった。  どうしよう。  言うだけでスッキリして気持ちのよくなる言葉って、あるもんなんだ……。  調子に乗った俺は、真っ黒の空に向かって、感情に任せるまま叫んだ。 .
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