立ちはだかる現実

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――… あの後すぐに病院にやって来て、私の身体を調べてもらった。 「……どうだった?」 「大丈夫だったみたい……すぐシャワーを浴びたおかげね」 「そう、良かったです」 彼が早い方がいいと言ったので、勇気をもらえた気がした。 本当は、1人で行く勇気がなかったと思うの。 こんなに怖い検査、生まれて初めての経験だったから……。 「少しは落ち着きました?」 「ええ、それよりさっきはごめんなさい……姉妹の喧嘩なんて、嫌なものを見せてしまったわよね……」 心配そうな目を向けてくる彼に、ポツリとそう呟いた。 こんなにも、心が曇っているのに。 ……外の天気は快晴だった。 頭の中が、クラクラしそうになりながら足を突き動かした。 今2人で一緒に向かっているのは駅前のバス停だ。 それは、私が実家へ戻るためなのだ。 その理由は、行く当てがないことと、両親の顔を見たかったということ。 「ねぇ理香、オレの家は広いし親も殆ど帰って来ないから、一緒に住んでもいいんですよ?」 「もう刹那っ! さっきからソレ、3度目ですけどー?」 私は笑顔を作って、彼の瞳を見つめた。
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