はるのおまじない

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午前6時20分 「いってきます」 感情のこもっていない声でそう言って、母の作ってくれたお弁当を鞄に詰め込んで。 私は家を出る。 満員電車は嫌いだし、朝練があるからいつも家を出るのは決まってこの時間だ。 自転車に乗って、外界の一切の音(毒)を遮るようにイヤホンを耳に詰め込み、ウォークマンの音量を上げる。 聴くのは、もう10年以上も前の曲。 何故それだけを聴くようになったのかは、覚えていない。 ただ、その曲はこころが軽くなって安心する。 前に進むための、勇気が出る。 それは、私にとったら朝の儀式に近い。 今日も1日乗り切るための、儀式。 いくらそれだけをプログラミングされた機械であったとしても。 私はこころを持つ弱い人間であったから。 地獄に向かうことを、厭わない訳がない。 だから…… 学校に行くまでのその時間だけは、現実から目を背ける。
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