はるのおまじない

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1年ばかりがいる北校舎の3階では、それなりに有名だったから。 私が通るとみんなが道を開ける。 と、誰かが面白半分に私の足先に足を出した。 引っ掛けて転ばそうとしているのだろう。 いちいち避けるのもめんどくさくて、わざとその足に躓き転ぶ。 両膝をもろに打ち、鞄が肩から外れて中身が派手に散らばった。 ころんと母の作ってくれたお弁当も飛び出た。 衝撃で、中身はぐちゃぐちゃになったことだろう。 そんな私の無様な姿がお気に召したらしく、足を出した男と仲間がゲラゲラと笑う。 周りの人間はコソコソと私を嘲笑した。 それはそうかと思う。 だって私は先日、近隣の県が集まる大会で入賞している。 その人間がだ。 こんなにも簡単に、無様に、躱すことすらできずにすっ転ぶとは思わなかったのだろう。 どこかから、「どうせ2位なんて、マグレなのよ」と聞こえた。
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