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ギリギリと頭の上で手首の関節を決められている男は顔を歪め、音がしそうなほど強く奥歯を噛んだ。
「はな、せ……お前がしてることと同じじゃねぇか! 何をそんなキレんだよっ?!」
「巫山戯るな。こいつはオレのモノだ。オレにはこいつをどうしようと、許される権利がある。わかったら、2度とこいつに手ぇ出すんじゃねぇ」
吠える男とは正反対に、仁の口調は淡々としていた。
ただ、声があまりに冷ややかで、骨の芯まで震えが這い上ってくる。
それはきっと、私だけではないのだろう。
この場にいた誰もが黙り、息を潜めたから。
「聞こえなかったのか」
言って、仁は男の手首を完全におかしな方向へと捻じる。
男の顔が苦痛と恐怖に歪むのを、私はただ呆然と見ていることしかできなかった。
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