21人が本棚に入れています
本棚に追加
「2度と、こいつに、手を出すな。いいな?」
「……………っ……………わ、わかったから……離せっ!」
男は叫んで思い切り手を振り払い、仁を睨みながら立ち去って行く。
相手が背を向けても、仁は最後まで殺気を孕んだ瞳を向けていた。
男が見えなくなって、気だるそうな動きで仁が私を見る。
今の勢いのままの眼で見られることが怖くて……
息を飲んだ私は、反射的に顔を伏せていた。
ーーチッ
と舌打ちする音が聞こえて、首を縮こませた私の髪を仁は無遠慮に掴み、無理矢理に顔を上げさせる。
その痛みに顔を歪めながら、あの眼で真正面から睨まれれば、私は抵抗もできずに歯を鳴らした。
「お前もだ。
巫山戯るな。避けられるものをわざわざ真っ向から受けやがって。オレ以外にの奴に傷を付けさせてんじゃねぇ。
わかったな?」
ぅ、あ……
と、歯の噛み合わない私が出せたのは、そんな情けない声だけだった。
最初のコメントを投稿しよう!