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(考えなしだったかな……)
けれど……
と"はる"は目に涙を溜める。
(もう、見てられないんだもん……)
思い出すのは、彼女の優しい手と声と笑顔。
そして、自分にだけ縋って泣く、姿。
初めてあった日のこと。
彼女は、あのね、と怯えていた"はる"を抱きしめて言った。
『チカはね、千のお花なんだょ。"はる"はお花が溢れる季節ことなの。
ねえ、"はる"。わたしたちは同じだょ。だから、ずっとずぅーっと一緒にいようね』
約束だよ、と彼女は笑った。
それからはずっと一緒だった。
彼女は誰にでも笑顔で明るいけれど、厳しいお父さんに怒られた時は決まって"はる"に縋った。
彼女の泣ける場所はここ(自分)だけなのだと思ったら、それだけは護りたかった。
なのに、あいつは無理矢理泣かした。それが、許せなかった。
頭に血が上って、つい牙を剥いてしまった。
"はる"は、相手に深い深い怪我をさせてしまった。
それが原因で彼女から引き離された。
どうなるかなんてわからず、彼女に厳しく当たるお父さんに連れられて。
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