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「リリィ。ダメよ、お客様を脅しては」
その声は本当に穏やかで。
ぽかんと惚けてしまった"はる"を、くすりと笑う。
「気付かなくてごめんなさいね。どうぞ、お入りになって」
促されて店内に入ると、その薄暗い空間を"はる"は物珍しげに見回すのだった。
リリィと呼ばれた少女は、ふてくされた顔で横を通りすぎる。
気配も、存在感すらもない足音で。
気になった"はる"は、つい目で追っていた。
少女はカウンターの奥で深く椅子に沈み込んだ、店主であろう女性の隣に立つ。
"はる"位置からでは、暗くて女性の姿はよく見えなかった。
けれど、とても雰囲気の優しい人なのだろうと思う。
「わるい子ね、リリィ。いつも言っているのに」
雪のように真っ白な手が少女に伸びて、頬を撫でた。
とても優しい手つきだった。
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