21人が本棚に入れています
本棚に追加
「お待たせして申し訳ないわね。
ーー望みは何かしら?」
そうしてやっと、店主の顔を"はる"は視た。
黒髪の、緩く微笑む表情が作りモノのように美しい女性だった。
"はる"は本能的に怖いと思った。
けれどそれ以上に、哀しみの色の濃い人だとも思った。
「なんだって叶えて差し上げる。それに見合う対価を差し出せば」
言って、機嫌の悪いままの少女を見た。
その表情は、どこまでも愛情深いモノであったから。
"はる"はほっと息を落とした。
「ここは魔屋(まや)。
願いを持つモノの、想いを叶えるお店」
もう一度真っ直ぐに視線を合わせた店主からはもう、哀しみの色は消えていた。
最初のコメントを投稿しよう!