二人のはじまり

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先生が繋いでくれた手が嬉しくて嬉しくて――胸がくすぐったい。 次第に身体の芯が、ジンと熱くなる気がした。  「あ、あのカウンター空いてるよ」   先生はホッとした笑顔を見せ、私を席へ誘導してくれた。   席につくと私はジンライムを注文。    「実はさぁ、俺お酒弱いんだよね。だからノンアルコールで」 先生は、少しはにかみながら烏龍茶を注文した。   会話をしながら私に向ける柔らかな笑み。 なんて優しく笑う人なんだろう…。     普段の、白衣を着ている姿とは違う先生。     お酒のせいなのか、 トクン…トクン… 止められない熱い鼓動を感じ、私も思わず照れ笑いが溢れた。    「先生って、普段あまり話さないから分からなかったけど…可愛い人なんだね」     自分でも驚く程に自然に溢れた言葉。   年上の先生に、しかも今まで仕事の話か世間話しかした事のない人に何て失礼な!     時既に遅し。口に出してから、自分でもそう思った。 でも、どうしても言わずにはいられなかった。
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