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「そうですよ。彼女だから婚約者の事ですけど?」
奈美は首を傾げ口を尖らせる。
「だよね、うん、婚約者の話ね」
よかった~私の事はバレてない。
もしこの子にバレたら…
恐ろしくて考えたくもない。
私は動悸を誤魔化すように、然り気無く笑い飛ばす。
「だから、その婚約者を見たんですよぉ。しかも新居までわかっちゃいました!」
「えぇ!?…新居って…なんでそんな事までわかるの!?」
不覚にも声が裏返ってしまった。
私もあのマンションに出入りしている。
これは、非常にマズイ!!
「それがですね~、二人があるマンションに買い物袋持って入っていくのを見たんですよ。それも病院のすぐ近くなんですよ!先輩にも今度そのマンション教えてあげますねっ」
私の焦りを余所に、奈美は無邪気な笑みを放つ。
「…うん……」
――もう、知ってるし。
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