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時計は7時を指していた。
支度をするため、重い体を起こし洗面所へと向う。
正面の鏡には、目を真っ赤に腫らした醜い女の姿が映る。
「なんて酷い顔。みんな驚くかな…」
顔を洗い、汚い顔を隠すためにとりあえずのメイクをして仕事に向かった。
病棟に着くとまず主任さんが私の異変に気づいた。
「櫻井さん?目、どうしたの?」
「いぇ…ちょっと……」
私は言い訳を考える余裕も無く、粗末な苦笑いをした。
その様子を見た他のスタッフは、気を使ってか何も聞いてこなかった。
ただ一人、おばちゃんナースの北村さんが、
「まぁ、結婚前は色々とあるわよ。マリッジブルーって言葉もあるくらいだしね」
と、私の背中をポンポンと叩きながら声を掛けて来た。
…マリッジブルーか。
それだったら、どんなに良かったか…
「そうですね。…ありがとうございます」
気の利いた言葉も浮かばず、その場しのぎの言葉を返した。
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