屈辱

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夜勤2日目。   今夜の病棟は、患者の急変も無くとても落ち着いている。     深夜1時の巡視が終わると、スタッフ二人がお茶を飲みに休憩室に入った。     私は受け持ち患者の看護プランを立てるために、一人机に向かう。     カルテのドクター記録のページを見ると、そこには水島先生の筆跡があった。     先生の筆跡を、そっと指でなぞる。   ここには、確かに先生の存在が残されている…   でも、今の私には先生が見えない…   今の私には先生が遠く、手の届かない存在になってしまった…。     先生…   先生…     ……    カルテの上に溢れそうになった涙を、グッと堪えた。     「あれ?櫻井さん一人?」    「え?!」   突然耳に届いた誰かの呼び掛けに驚き、落としていた視線を上げる。
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