屈辱

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振り向くと、そこには当直の森先生がいた。     「あ、お疲れさまです。今、二人休憩室にいるので…」    そう答え、私は涙目を見られまいと後ろのパソコンに向かって処方オーダーを確認する作業に入った。     森先生は黙々とカルテ記載をしている。     ナースステーションには、心電図モニターの音と、森先生がカルテのページを捲る音、そして私がパソコンのキーを打つ音だけが響いていた。     「ねぇ…櫻井さんって『唯』って名前だよね?」     森先生が、突然話しかけてきた。 「…はい…そうですけど?」     「櫻井さんてさぁ…もうすぐ結婚する?」     「…はい…しますが…」     きょとんとしながらそう答えると、森先生はククッと意味ありげに笑いだした。     何なの?一体… 次に「ハハハッ!」と大きな笑い声を立てたと思いきや、 「はい、確定診断つきました!」 不敵な笑みを浮かべ、そう言った。
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