私に触れる時間 第6話

屈辱

「ねぇ～、ピアス、わざと落としてったの？」

薄ら笑いを浮かべ、先生が言った。

その言葉で、一気に私の頭に血が上る。

「まさか、違いますっ！」

私は挑発に乗るように、荒々しく言い放った。

余裕の無い私の姿を見て、男は更に満足気な表情を見せる。

「そんなにムキにならなくてもいいのに。でもさぁ、何で水島なの？あいつ、真面目な奴なんだから遊ぶ相手には向かないだろ？結婚前に摘まみ食いしたいなら、他の奴にしときなよ。あの彼女も真面目な子でさぁ～…そんな二人を掻き回して、面白い？」

二人を掻き回して面白い？　

なんて言い方をッ！

怒りで震え、遡った血液で顔が熱くなる。

何で、あんたにそんな事言われなきゃいけないのっ！？

――悔しい…悔しい…悔しいっ！！　

だけど…何も言い返せない。

ここで「私は先生を本気で好きなの！」――そう言ったとして、そんな言葉が何になるのか。

傍から見れば、ただの汚らわしい関係だ。

しかし、私はこの男に言われた事が屈辱的だったのだ。