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さゆりさんは、私の胸元に視線を落とす。
その視線の先には、もちろんネームプレートはない。
…余計に怪しまれるかな。
「あの、どなたかの面会の方ですか?」
私は、彼女の視線を遮るかのように声をかけた。
「いえ…患者さんの面会ではなくて…水島は、この病棟に来てますか?」
「…水島先生の事ですか?」
白々しく、首を傾げて言葉を返した。
さゆりさんは、私を『唯』だと知っているのか…
それとも、まだ確かめている段階なのか…
私の心臓は、もはや破裂寸前くらいの動悸を発している。
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