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「いや、本当は森が当直だったんだけど、森の都合で急に交代したんだ。それでさゆりに、昼休みに当直の着替えを取りに帰るって電話したら…荷物届けに来ちゃって」
荷物取りに帰るって電話を、さゆりさんに?
もう、一緒に暮らしてるのかな…
胸がズキッと痛々しい音を鳴らした。
【うちの水島…】
さゆりさんのその言葉が、頭に甦る。
奥さん…
まんざら、早すぎでもないのか…。
――胸が苦しい…。
「…何でうちの病棟に?医局に届ければいいのに」
目を伏せて、問いを落とす。
「医局に行ったみたいだけど、俺いなくて。それで唯の病棟に行ったみたい…」
「…私を見るために?」
「たぶん…そう。本人は違うって言ったけど…。さゆり、あいつ気持ちが不安定で突然泣き叫んだり…とにかく行動が普通じゃないんだ…。
俺があいつをそうさせた。唯にもつらい思いさせて…本当にごめん。俺…唯に何もしてやれない…」
先生は、悲痛な声でそう言った。
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