246人が本棚に入れています
本棚に追加
「はははっ!ホントだ。唯がいる」
先生はベランダから下を覗き込み、携帯を耳に当てながら笑っていた。
「ごめん…なんか私、ストーカーみたい」
私は灯りに照らされる彼を見上げ、苦笑いを溢す。
「ホントだ。ストーカーだな」
先生は、ベランダの手すりにもたれニヤニヤと笑っているのが見えた。
「唯。いつまでそこにいるの? 早くあがっておいでよ」
「えぇ?!…あがってって…それは、さすがにマズイでしょ!」
先生があまりに平然と言うので、かなり驚いた。
「だって、俺監視されてるから部屋から出られないもん」
「監視?…さゆりさんに?」
「そう。寝るまで15分おきの電話来るから…外に出られないんだよね。とにかく、早くあがっておいで。ここでこうして携帯で話してるのもおかしな状況でしょ?」
先生は、柔らかな声でそう言った。
「うん…。じゃあ、行く」
私は複雑な思いに駆られながらも、先生に会いたい一心で駐車場に車を止めた。
最初のコメントを投稿しよう!