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「…唯…」
「ごめんっ!やっぱいい!答えなくていいからっ」
少しの沈黙が、恐かった。
「唯…俺は…」
「良いの!忘れてっ」
耳を塞ぐように先生の言葉を遮り、立ち上がった。
「ごめんね。こんな時に変な質問して。私も、先生と過ごした時間をずっと忘れない。…何年経っても…ずっとずっ…ぅぅ…」
語尾が、嗚咽で声にならない。
止める事の出来ない涙。
先生は唇を噛み、ゆっくりと立ち上がると私の瞳を真っ直ぐに見つめる。
「先生…最後に握手してよ。お互い…これから頑張ろうの握手だから」
私は涙を手で拭い、精一杯の笑顔を見せた。
そして、右手を差し伸べた。
先生の手が、私の手を握る。
…好きだった、この大きな手…
私に優しく触れた…包み込んでくれた手…
もう、二度と触れることはできない…
この手を離したら…もう二度と…
…
…さようなら………―――先生。
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