消えぬ思い出

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「慎ちゃんの店にいるんだ。唯も今から来いよ。みわさんも唯に会いたいって言ってるし」     慎ちゃんの店…だから、バックからジャズが聞こえるのか。   「…あれ?なんで直人もうこっちにいるの?帰って来るの明日の朝じゃなかった?」 その事にふと気づき、首を傾げる。   「仕事早く切り付いたからさっき帰って来た。とにかく、今から来いよ。待ってるから」     そう言うと、直人は一方的に電話を切った。 来いよって… 今からお風呂入って支度して…あっちに着くの何時だよ。   ったくー、直人は勝手なんだからっ!   ブツブツ文句を言いながら支度を始める。     慎ちゃんの店とは、私と直人が初めて会った常連客の集まるあのジャズバーだ。     慎ちゃんはその店のマスター。 かなりの下ネタ好きで笑える人物なので、皆からエロマスと呼ばれ慕われている。     みわさんと言うのはマスターの奥さん。 とても明るく優しい、お姉さまタイプの人だ。     何故この二人が長年夫婦でいられるのか――今でも謎だ。
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