結婚前夜

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『だから…俺は唯を忘れようなんて思わない。唯は俺の心の支え。今までも…これからも。 でも、俺はさゆりと共に歩いて行くと決めた。唯も彼と歩いて行くと決めた。 決めたからには、ちゃんと自分自身で家庭を守る努力をしていかなきゃいけないんだ』     「守る努力?」     『うん。さっき、「彼なら唯を幸せにしてくれる」そう言ったよな?唯にも、自分で幸せになろうと頑張って欲しいんだ。 俺は、この2ヶ月間結婚生活をしてきた。それで感じたこと…やっぱり付き合ってきた今までとは違う。 毎日一緒に暮らしていると、今まで見えなかった事も見えてくる。唯を想う気持ちが苦しくなる事もある…』 『だけど…いつも「これが自分の選んだ道なんだから!さゆりと一緒に幸せになれる!」そう自分に言い聞かせる。 唯も結婚生活をしているといつか同じ思いをするだろう。だけど、その時逃げないで欲しいんだ。俺がいると思えば、きっと俺の方に逃げたくなる。 でもそれじゃ駄目なんだ…自分ですべてを壊してしまう。俺の言いたいこと…わかるか?』     ゆっくりと言葉を連ねる彼。 「…先生に頼っちゃ駄目。ってこと?」 私は弱々しい声でそう言って、口を噤んだ。  
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