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『な~に言ってんの。私と唯の仲じゃない。それに、香織達と一緒にやってるから大丈夫!』
ちらっと聞いた話しによると、看護学校時代の友人達も含め何やらナース服を着て面白い事をやるらしい。
結婚式に本物ナースが制服で余興。
私も経験があるが、おじ様や若い男性達の黄色い声援が飛び交う。
まるでイベントスタッフ状態だ。
しかも、今回はあの毒舌行動派の綾子が余興を仕切る…
何とも言えぬ、妙な期待と不安を感じる。
『ねぇ…先生とはもう連絡とってないの?』
何の脈絡も無く、綾子が話を切り出した。
その言葉に反応し、私の心臓がドキッと不快な音を立てた。
「うん…たまに先生が当直の時に電話する。メールも時々。先生が病院にいる時間に私が入れて、夕方先生が家に帰る前に返事がくるくらい」
『そうか。まぁ…仕方ないよね。二人が選択した事だから。早く唯も忘れなよ』
電話の向こうで親友が、私を気遣いながら控えめな口調で言った。
「…うん、そうだね」
無二の親友に心配をかけまいと、平気な振りをして答えた。
忘れたくない。―――私達は、終わらない。
…その言葉は、誰にも聞こえないように胸に閉じ込めた。
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