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「分かってるよそんな事っ。先生は自分の責任を果たそうとしてる。さゆりさんを大切にしたいって思ってる。
さゆりさんだってきっと必死なんだ…不安なんだ。必死に自分だけを見て欲しくて、いっぱい外出したがったり、夫婦のルールを作ったりするのも、二人の時間を大切にしたいから」
…先生の心を束縛したいから。
本当の夫婦になりたいから…。
「あの二人は手を繋いで、同じ希望に向かって歩いている。そんなの…私にだってわかってる。私だって考えてるよ…
だけど、もうどうすればいいか分かんない。焦れば焦るほどに、直人が遠くなっていく気さえするの…」
「唯…」
悲痛な言葉を連ねる私を見つめ、綾子は何も言えず口を噤んだ。
「ごめん…心配して言ってくれてる綾子に嫌な言い方して…ごめん…」
いつの間にか、私の目からは涙が零れていた。
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