新しい生活

6/19
前へ
/27ページ
次へ
「私、そろそろ帰るね。久しぶりの仕事だから早めに寝たいし」     「俺もあと少し仕事を片付けて帰るわ」   「可愛い奥さんの待つ、愛の巣に?」     「…唯、俺に叱られたいの?」   彼は口を尖らせ拗ねたふりをする。 先生の反応はいつも可愛い。…見ているだけで心が癒される。   「だって、私は帰っても一人ぼっちだもん。つまんな~い」     眉を八の字にする彼を見ながら、わざと甘えた声で言う。 「そうか…旦那さんは出張か。一人は淋しいな」     先生は少し間を空け、私を気遣うように静かな声を落とした。 一人は淋しい?…私、淋しそうに見えるのかな…。 向けられる視線が優しい程、胸が痛くなる。 「別に。慣れてるからいいけどねっ」     しいて明るい声で言って、「じゃあね!」と手を振り休憩室の扉を開けた。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加