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帰り道、私は先生のマンションの方向から帰った。
マンションの手前でスピードを落とし、先生の部屋に視線を飛ばす。
リビングに掛かる淡いグリーン色のカーテンが内側から温かい光を放つ。
あの部屋の中で、さゆりさんが先生の帰りを待ってるんだ…
愛する旦那様のために、美味しい料理を作って…。
そうか…分かった…
私の心を蝕む、醜い感情の正体が。
先生…
私は、一人ぼっちが淋しいんじゃないよ。
家に帰れば、あなたの側にはいつもさゆりさんが居る。
あなたには、いつも待っていてくれる人がいる。
なのに、私は結婚しても何一つ変わらない。
私は、自分だけが一人ぼっちでいるのが淋しくて、悔しいんだ。
独身でいた時よりも、結婚をした今の方が一人でいる時間が虚しい…。
柔らかな灯りに包まれた窓から目を逸らし、その場から逃げ出すようにアクセルを踏んだ。
―――明日から、またいつもの毎日が始まる。
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