招待状

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「ねぇ…先生は幸せ?」   私の口から言葉が零れ落ちた。     「…そうだね。結婚すればどんな家庭もきっといろんな事がある。たぶん、幸せなんだと思う。…唯は?」   「うん。直人とは上手くいってる。最近は喧嘩もないし…私も幸せなんだと思う」     視線を伏せて、冷めかけた珈琲の残りを飲み干した。   「世間一般で言う幸せって、何なんだろうな」     視線を床に置いたまま、彼が呟くような声で言った。 その声は私にではなく、自分に問いかけているように響いた。 先生…     私達は、初めから自分に嘘をついて今の道を選んだ。     お互いの婚約者を失う勇気も…     自分たちの環境を壊してまでも一緒になる勇気も…     …私達には無かった。
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