小指の微熱

3/10

257人が本棚に入れています
本棚に追加
/35ページ
「えっ? は、はい。どうぞ」   突然横から話しかけられ、私は慌てて軽く会釈をし体を横にずらした。   「ここに立ってるって事は、澤原さんも遅刻したね」     水島先生が微笑みながら、私の横の壁にもたれた。     「なんだぁ、先生か~。『看護婦さん』だなんて言うから、誰かと思った。急に説明会行ってって頼まれたからさ。…そう言う先生こそ、もう半分説明終わっちゃってるよ?」     くすっと笑いながら、先生を見上げた。 「ちょっとCF(大腸内視鏡)が長引いちゃってさぁ。…って言うのは言い訳で、実は最初から遅刻していこうかと思ってたけどね」   「なにそれ。全く怠けドクターだな~」   「だって、この薬の説明薬剤部でももう一回やるって聞いたからさぁ。俺って一度聞けば理解できるから」     「はいはい、寝言は寝てから言いましょうね」     「あれ?また俺、軽く馬鹿にされてない?」     「そう?そう聞こえるなら、そうかもね」     私は密かに笑いを堪えながら、正面の映像を眺めている。     「相変わらず辛口だなぁ」   先生は、肘で私の腕をコツンと押した。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

257人が本棚に入れています
本棚に追加