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「…なるほどね。それ、私にも分かる。知りたいけど知りたくない。知りたくないけど知りたい。『私の事が大切なら上手に嘘を貫き通してよ!』ってヤツでしょ?…なんか、懐かしいな。この会話…」
綾子はビールに視線を置いたまま、フッと小さな笑みを浮かべた。
「え…、懐かしいって、何が?」
私は首を傾げて親友の横顔を見る。
「へっ?ううん、何でも無い。数年前に慎ちゃんとそんな会話したことがあったな~って、懐かしかっただけ。
…認められるのが怖いんでしょ?失くしたくないものなら尚更」
「うん。認められたら、もう終わるしかないって事もあるんじゃないかと思って」
「誠実さが時には残酷さに変わる。何が本当の優しさなのか、分からなくなるよね…ホント」
綾子はテーブルに何か言いたげな視線を置いたまま、ビールの缶を両手で握り苦笑いを浮かべていた。
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