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そんな二人が離れ離れになったのは、直人が東京の本社ではなく名古屋の営業所に就職が決まったのが切っ掛けだった。
まどかは大学を中退し、名古屋について行くと言い出した。
しかし直人は説得し、一年後まどかが無事卒業してから迎えに行くと約束したのだった。
二人は遠距離恋愛を決意した。
風に散る桜の花びらが別れを惜しむ4月――
直人に待っていたのは、新入社員として数ヵ月間の過酷な研修の日々だった。
今までの堕落した世界とは違う社会人としての厳しい世界。
直人は当然、恋人を気づかう余裕もなかった。
8月―――
まどかの淋しさは我慢の限界に来ていた。
お盆休みを使って会う約束をしていた直人は、初めて恋人を迎え入れるために当日の朝部屋の掃除に気合いを入れた。
半年ぶりに会う恋人。
直人は名古屋で有名な、夜景の見えるレストランを予約していた。
「確か到着は4時だったな」
早めに駅に着いた直人はソワソワしながら彼女の到着を待った。
しかしその日、彼女は直人の前には現れなかった―――。
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