真夜中の電話

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何て虚しい…     何て、無様な姿なの?     私は今まで、直人を疑った事など一度も無かった…     通話履歴もメール履歴も見たことなど無かった。     それはきっと、直人も同じだ。     それなのに、直人を裏切った立場でありながら自分のしたことは棚に上げ、直人を疑い怒りで我を見失っている。       私はなんて、身勝手で無様な女なのだろう…。     さゆりさん…    あなたもそうだったの? こんな気持ちで毎日先生の携帯を確認していたの?     愛する者に裏切られ…     信じたくても、信じられない。     疑いたくないのに、疑って頭から離れない。       疑心に埋め尽くされ次第に醜く歪んでいく心。       それはなんて辛く、虚しいものなのか…。     さゆりさんはただ純粋に先生だけを愛し、信じていた。     その苦しみは、私が想像するものより遥かに大きいに違いない。       それが――― 私が彼女に与えた苦しみなんだ…。
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