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「唯は明日休み?」
「うん、休みだよ」
私は再び伝票整理を始める。
「じゃあ、明日は土曜日だし旦那さんと1日ゆっくりするのかな?」
先生も再び画面に向かい、点滴の指示を入力し始める。
「明日から直人は友達の結婚式で東京に行くの。だから私は主婦業お休み。一人でのんびりさせて頂きます!」
「東京…そうか…」
一瞬キーを叩く音が止まり、先生が低い声を漏らした。
私はどこか違和感を覚え、ゆっくりと先生の背中に視線を向ける。
「…先生?どうかした?」
眉を引き上げて控えめな声で問う。
「ううん、何でもない。…ほら、またあれ買ってきて貰うんだろ?いつもの…」
「東京ばなな!でしょ?」
私は先生の背中に向かって笑顔で答えた。
「そう!東京ばなな。…今度、俺にもお裾分けして貰うかな」
そう言った先生は、何故か振り返らずジッと画面を見つめていた。
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