真夜中の電話

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0時を過ぎたマンションのエントランスは音一つなく静まりかえり、自動扉の開閉音と足音だけが響き渡る。     準夜を終えた私は、コンビニで買った夜食のサンドイッチの袋を下げ、重い足取りで部屋に向かう。     カチャと小さな音を立てて玄関の鍵を開けた。     …あれ?直人の靴…   出張から戻るのは明日だって言ってたのに…。     私は夫の靴を整え、灯りのついたリビングの扉を開けた。   ソファーの上に横たわる直人の姿。 彼は広げた雑誌を胸に置いたまま、すっかり眠りについていた。     「直人、こんな所で寝ちゃ駄目だってば」   私は彼の胸に置かれた雑誌を取り、リビングテーブルに置いた。   「…あ?…ああ、お帰り。…あれ?今、何時? 」   天井の照明の光を眩しそうに見て、直人は両手で顔を擦る。
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