真実

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玄関を開けると、直人の靴が無造作に脱ぎ捨てられていた。     私は鞄を玄関先に置き、直人の靴を揃える。       「お疲れ!今日は残業なく帰れたんだな」     風呂あがりの直人が、下着一枚の姿で脱衣室から出てきた。       「…ただいま」   私は靴から手を離し、腰を屈めたまま直人を見上げた。 「唯が準夜って聞いて、結局向こうでのんびりして来たよ。俺もさっき帰ってきたばっか」   肩に湿ったバスタオルを掛け、キッチンに向かった直人は冷蔵庫の缶ビールを取り出した。     「へぇ…誰と一緒にいたの?」     私は直人の顔を見ずに言って、床に置かれた直人の鞄を開けた。     「誰って…だから宮田だよ。あと夕食は宮田の彼女も一緒に中華街に行ってきた。唯に綺麗なアクセサリーケースを買ってきたぞ。お香の匂いするやつ」     直人は満面の笑みを浮かべ、洗濯物を取り出す私の横から手を入れて鞄の中を探る。     「直人…私、昨日ずっと電話待ってたんだよ…」     洗濯物を抱え立ち上がり、床にしゃがみ込む直人を見下ろした。
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