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その後も何やらまどかが話していたが…
全く覚えていない。
『おい!まどかっ!なに勝手に俺の携帯使ってんだよ!』
不意に遠くから聞こえた彼の声。
…直人?
彼の声が耳に流れ入り、ハッとして伏せていた顔を上げた。
『あっ、もしもし?唯か?』
「直人…」
『ごめんなぁ~。思ったより二次会長引いててさぁ~。もうすぐ終わると思うから、後で電話するわ』
かなりお酒が入っているのだろう…
上機嫌でヘラヘラと笑っている直人の姿が目に浮かぶ。
「…直人…お願いだから…今から外に出て…話したいことがあるの…」
彼の声を聞き、目頭が熱くなる。
携帯を握りしめ、縋る思いで涙混じりの声を絞り出した。
『えっ?なに?…ここ煩くてよく聞こえない』
「話したい事があるの。まどかさんのいない所に…」
『はっ?なに?とにかく、後で電話するから』
直人は私の悲痛に満ちた声を打ち消して、一方的に電話を切った。
ツー…ツー…ツー…
――――耳に残る、冷たい音。
直人…どうして…
手のひらから滑り落ちた携帯は、フローリングの上に叩きつけられ『ゴトッ』と大きな音を立てた。
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