真実

6/14
221人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
深夜1時。 仕事を終えた私は睡眠不足で気怠い体に鞭を打ち、20分かけて自宅まで運転をする。     先生の私を見つめる視線が頭から離れない…     あれから私は黙々と仕事をしていて、先生とは一言も言葉を交わしていない。     最近ずっと心配してくれてたから…   きっと、何かあったと思っただろうな…。     いつも先生は私を見守っていてくれる。 それは、一緒にいたあの頃と何も変わらない…。       次に先生に会ったら、どんな顔をしたらいいの? 「はあ…」 愛車を止めた駐車場からマンションを見上げ、深いため息を落とした。       直人…   今は、直人と向き合わなきゃ…。     エレベーターを上がり一番奥へと進む。       まどかが私に言った言葉…     すべて、直人に話そう。     まどかは『直人を頂戴』と言った…     たぶん、彼女は本気だ。    実際に奪う気持ちは無かったとしても、直人に対して気持ちがあるのは確かだ。       ずっと知らない方がいいと思っていた。 自分の裏切りが、真実を求める気持ちに歯止めを掛けていた。     でも…   気にしないフリは、もうできない。     これ以上待てない…。     直人を責めるつもりはない…     私はただ、妻として真実が知りたい…。         鎮痛剤の効果が切れて来たのか、ズキズキとまた頭が痛む。     コツコツコツコツ…      自分の足音が緊張感を高め、更に頭に響いてくる。         大きく息を吸い込み、玄関の扉を開けた―――。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!