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「……」
直人は黙って床の一点を見つめている。
「直人…」
襲い掛かる絶望感。
彼の表情を見つめ、私は確信してしまったのだ―――
直人と一緒に居て3年…いや、もう4年になる。
心底追い詰められた時、何を言いたいかくらい表情を見れば分かってしまう…。
私が直人の立場なら…
私が自分の犯した罪を責められたのなら…
追い詰められる程に、きっと思うだろう…
『もう、罪から解放されたい』と―――。
知りたいのに、知りたくなかった真実。
この言葉を口にしたら、きっと後には戻れない。
今まで築き上げてきた物を、自ら壊すかも知れない…。
直人…ごめんなさい。
だけど、どうしても止められない…
私は真実を知りたいの。
……
「まどかさんと…寝たんでしょ?」
静かな声がぽとりと落ちた。
直人を見つめる瞳。それはきっと責めるものではなく、真実を求める縋るような瞳。
「唯…ごめん…」
両手で頭を抱え込み、直人がうつ向いて言った。
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