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「…知ってます。直人から聞きましたから。佐野さんとお店に行った事も、直人とあなたが二人で会った事も、直人は私に隠さず話してくれますから」
私と直人の間に隠し事はない!
私達は分かり合っている!
あなたなんて眼中にないのよ!
彼女の勢いに押されまいと、自分が愛されていると言う優越感を掲げる。
相手を恐れるが故に…。
女の嫉妬と争いは、
きっと『あなたより私の方が愛されてるのよ!』――そのプライドのぶつけ合いから始まる…。
『へぇ~、唯さん知ってるんだ。直人って昔から馬鹿正直なトコあるから、嘘つけないのよね。唯さんとの夫婦生活の事も聞けば話しちゃうし』
妻としての精一杯の意地をいとも簡単に振り払って、彼女はクスクスと笑った。
「夫婦生活…何の話しですか…」
途切れた声を漏らすと、そんな自分が既に相手のペースに嵌まっているのだと感じ喉が詰まる。
そしてその直後、
『唯さん、あなた達って最近セックスがご無沙汰なんですって?あなたも忙しいかも知れないけど、しっかり夫を満足させてあげなきゃ。じゃないと…男なんて簡単に浮気するわよ?』
さらりとそう言って、彼女は高らかに笑った。
一瞬にして体が凍りつき、私は完全に言葉を失った。
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