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「やっぱり、まどかって女と体の関係あったのか…」
リビングのテーブルに肘をつき、綾子が大きなため息を落とした。
「一回だけって言ってたけど…」
力の抜けた声を漏らし、綾子が入れてくれた紅茶をゆっくりと一口飲んだ。
「まぁ…一度きりの過ちと言うか…ほんの出来心と言うか。直人も馬鹿だなぁ…相手はかなり厄介な女。大体さぁ、元カノってのがくせ者なんだよね」
綾子が不機嫌に口を尖らせた。
「そうなんだよね。何なんだろ…悔しさが違う。私の知らない過去を知ってて…
向こうからしてみれば優越感みたいなのがあって…余計に悔しい」
「それ!分かる分かる!『私達にはあなたの知らない歴史があるのよ!』みたいな態度が腹立つんだよね~。女って、男よりも過去に嫉妬するから。女のプライドの問題だからね。優越感を掲げられると憎さ100倍っ!」
綾子が興奮を露わに頷きながら声のトーンを上げた。
「まどかさん…相当悔しいだろうね…」
興奮する綾子とは裏腹に、私の心は複雑だった。
「う~ん…まぁ…向こうは向こうで悔しいよな…。気持ちがあれば尚更、唯に意地悪したくなる気持ちも分からんでも無い」
綾子は再びため息をつき、カップの口を指でなぞった。
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