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「…どうしてそう思うの?綾子…やけに先生をお薦めするけど」
私がカップに温かい紅茶を注ぎながら言う。
「え?…ん…何となく。…そのうちに分かるよ。唯が行動に移せばだけどね」
不思議そうな顔をする私を余所に、綾子は私のカップに砂糖を1つ『ポンっ』と軽く投げ入れた。
その弾みで紅茶が跳ね返り、お皿に数滴溢れた。
「ちょっと!全くがさつなんだから。綾子が奥さんになるなんて本当に信じらんない」
「ははは!自分でも信じられんですわ~」
「…ねぇ。何で急に結婚しようって決心したの?」
「ん~何でだろ。…唯を見守って来たら自分の過去を思い出して…何となくね」
綾子は私に目配せした後、視線を真っ白な壁に移してフッと静かに笑った。
「私を見守ってたら?」
「こんな事言うと唯に失礼だろうけど…あんたを見てるとさ、今自分の側に居てくれる人を手放したくないって思えて。本当に自分を大切に想ってくれる人を手放したら、きっと一生後悔する気がして。そう思ったら翔太が今までより大切に感じてさ。いつまでも忘れちゃいけないんだよね…そう言う気持ち」
綾子は照れ笑いを浮かべながら、愛する人のいる寝室の扉を眺めていた。
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