雨音

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まどかさん… あなたは私に【直人を頂戴】と言った。   私だって、ずっと心の中で叫んでた。     『先生を私に頂戴!』   『あなたより先に先生と出会っていれば。あなたさえいなければいいのに!』    …ずっと、ずっとそう思っていた。     でも、決して口にしてはいけない言葉。     どんなに見守ってくれていても…   どんなに想いを忘れないでいても…     側にいなければ心は満たされない…。     愛された記憶は、時間と共に薄れ消えていく―――。       ……「さゆりさん…私に先生をください…」       涙で彼女の姿が霞み、私の掠れた声は雨音で掻き消された。  
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