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こんな所にいつまでもいられない…
だからと言って、帰りたくない。
私はシートの上で丸めた体を起こし、助手席の鞄から携帯を取り出した。
ごめん…綾子。
こんな時間に…
でも、頼れるの、あんたしかいないんだ…。
耳に流れる呼び出し音。
『…もしもし…唯…?どうした?こんな時間に…』
眠りから無理やり引っ張り出された、綾子の声。
「ごめん…綾子。起こしちゃって。私、どうすればいいかわかんなくなっちゃって…頼るの綾子しかいなくて…ごめん…ごめんね…」
親友の声を聞き再び涙が溢れだす。
『ちょ、ちょっと!?あんたどうしたのっ!…もしかして、直人と何かあったの?』
私の異変で眠気が一気に吹っ飛んだのであろう。綾子は驚きのあまり声を裏返した。
「…直人が…まどかと寝たって…」
少し躊躇って、小さな声を落とす。
『ええっ!?ちょっ、待った!そんな大切な話を…唯、今からうちにおいで』
「おいでって…今…翔ちゃんいるの?」
『翔太?いるけど、そんなの全然気にしなくていいから。気をつけておいでよ。考え事して車突っ込んだりしないでよっ』
「うん。ありがと…」
親友の声を聞いて安心したのか、私の口もとから少しだけ静かな笑みが零れた。
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