雨音

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綾子のマンションは、病院から車で15分ほど走った場所にある。     辺りは新しい家ばかりが数件並ぶ、静かな場所だ。     綾子は2週間前に寮からこのマンションへと越してきた。     2階に上がり左奥の部屋の前まで行くと、私は少し躊躇いながらチャイムを押した。     焦げ茶色の扉がゆっくりと開き、「いらっしゃい」と、綾子が笑顔で迎えてくれた。   「本当にごめん。こんな時間に…」     「何言ってんの?私と唯の仲でしょ?今更遠慮しないでよ。ムズ痒くなるじゃん。まだ段ボールだらけの部屋だけど、上がってよ」   綾子は笑いながら、新品のスリッパを置いた。     廊下の突き当たりにあるリビングの扉を開ける。 すると、 「唯ちゃん、いらっしゃい。久しぶりだね~」 今度は、綾子の婚約者である翔ちゃんが笑顔で迎え入れてくれた。  
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