259人が本棚に入れています
本棚に追加
「…逃げるって…どこに逃げるの?…先生の所?」
私は眉を下げ、うつ向く唯の顔を見つめる。
「…それは…絶対しちゃいけないし…許されないし…もう、迷惑掛けられない…本当に…」
唯は、まるで自分に言い聞かせるようにそう言って、両手で顔を覆った。
唯は…
自分が何をしたいのか、何が大切なのかも分からないでいる…。
ずっと守ろうとしてきた直人との結婚生活…
先生への秘めた想い…
2つの矛盾した思いが彼女の心を揺さぶる。
罪悪感の中で、理想の妻にも成りきれず。
だからと言って、愛する者を奪いさる完全な悪女にも成れない。
唯…あなたが本当に手に入れたいものは何?
本当は自分でも気づいているんでしょ?
―――――このままだと、唯は前に進めない…。
最初のコメントを投稿しよう!