綾子の思い

11/13
前へ
/32ページ
次へ
―――その夜、私は寝付けずにいた。 無意識のうちに何度も落ちるため息。       「あれ?まだ起きてたんだ」   帰宅した翔太がベッドにもたれ、もの思いにふける私に声を掛けた。     「お帰り。なんか、眠れなくて…」     「…唯ちゃんの事?綾子が気にしても、結局答えを出すのは唯ちゃんなんだから。明日も仕事だろ?お前も早く寝ないと」   私の体を気遣う翔太はフッと小さく微笑んで、ネクタイを外し椅子に掛けた。     「分かってるよ…分かってるけど…。ちょっと水飲んでくる。翔太も飲むでしょ?持って来るよ」     私は最後に大きく息を吐き、立ち上がって寝室の扉を開けた。   キッチンに向かう途中に、唯の眠っている部屋がある。       唯…ちゃんと眠れてるのかな…   私は足音を消し、唯の眠っている和室の引き戸に手を掛けた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

259人が本棚に入れています
本棚に追加