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―――その夜、私は寝付けずにいた。
無意識のうちに何度も落ちるため息。
「あれ?まだ起きてたんだ」
帰宅した翔太がベッドにもたれ、もの思いにふける私に声を掛けた。
「お帰り。なんか、眠れなくて…」
「…唯ちゃんの事?綾子が気にしても、結局答えを出すのは唯ちゃんなんだから。明日も仕事だろ?お前も早く寝ないと」
私の体を気遣う翔太はフッと小さく微笑んで、ネクタイを外し椅子に掛けた。
「分かってるよ…分かってるけど…。ちょっと水飲んでくる。翔太も飲むでしょ?持って来るよ」
私は最後に大きく息を吐き、立ち上がって寝室の扉を開けた。
キッチンに向かう途中に、唯の眠っている部屋がある。
唯…ちゃんと眠れてるのかな…
私は足音を消し、唯の眠っている和室の引き戸に手を掛けた。
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