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「何でって…だから俺が聞きたいんだって。避けるって言い方で良いのか分からないけど…病棟でも、俺に近寄りたがらないって言うか…」
「ちょっと待った!今まで二人は病棟でイチャついてたの!?」
「違う違うっ!そう言う意味じゃなくてっ、院内でイチャついてなんて無いから、本当に!」
先生は動揺をあからさまにブンブンと首を横に振り、必死に弁解。
あらま。何もそんなに焦らなくったって…
よくまあ、こんな不器用そうな男が同時に二人の女を相手に出来たもんだ。
…そう言えば、いつだったか唯が言ってたなぁ…「先生って可愛いんだよぉ~」とは、この事か。
確かに。これは弄りがいがある。私の好みの男じゃ無いけど。
「綾さん…なにニヤケてるの?」
「へっ?いや、別に何でも無いよ。ささっ、話を続けて続けて」
私は込み上げる笑いを堪え、悪戯気に喉をククッと鳴らし「どうぞ」と手のひらを先生に向ける。
「そうじゃなくて…ほら、雰囲気って言うか。メールも急に唯からは来なくなったし、当直の日の電話も先月は都合が悪いって断られたし…」
先生は視線を足もとに落とし、口をもごつかせる。
「当直の電話?…ああ、バイト先の当直ね。どっかの水曜日だっけ?」
「うん。第3水曜日。本当に都合が悪かったのかも知れないけど…色々と繋げて行くと、やっぱり何か様子がおかしい気がして。そこで綾さんのあの言葉。…綾さん、唯に何かあったの?どうしても心配で…俺は、事情も聞いちゃいけないの?」
先生は慎重に言葉を並べ、偽りの無い真っ直ぐな瞳で私を見た。
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