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翌日――
「今日は、私があんたを最高の女にしてあげるから!」
綾子がはしゃぎながら、私の指にマニキュアのベースコートを塗る。
仕事上、手の爪にお洒落ができない看護師は、ストッキングで透けて見える足の爪に気合いを入れる。
「今日は足に揃えて手もやろうか。ベースの色は…青!アートは黒がいいなっ」
ネイルアートが得意な綾子は、机の上にご自慢のマニキュアを数十本並べて言った。
「綾子に任せる。綾子ってがさつなくせに、こういう事に関しては素晴らしく器用だよね~。今度私にも教えてよ」
「がさつだから不器用だとは限らないでしょ?がさつは性格の問題だから~」
爪に神経を集中させながらもおちゃらけ口調で言って、綾子は筆先を細やかに動かす。
がさつは性格の問題だからって…
そこで開き直るなよっ!
爪を走る筆先の感触をくすぐったく感じながら、親友の真剣な表情をチラリと見て、クスッと笑った。
「できたっ!我ながらすっごくイイっ!服に合ってる~」
アートの出来栄えに自画自賛する綾子。
「本当!綺麗だね~」
私は両手を前にかざし歓喜の声を上げた。
私の爪には、深い青のベースに黒の蝶が描かれ、蝶の周りにはシルバーストーンが散りばめられていた。
「蝶が舞ってるみたい…」
私は爪を眺めながら、柔らかな声を漏らした。
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