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「和馬っ…結城先生も来てたんだ」
綾子はその男性の顔をマジマジと見て、箸の動きを止めた。
「ああ。今回この病院で仕上げた論文を学会で発表する事になったから。俺は一応OBって事で呼ばれた。二人とも元気そうだね」
結城先生は口の端をクッと上げ、私と綾子に笑い掛けた。
「ええ。おかげさまで。先生もお元気そうで」
綾子は澄ました表情を見せた後、首を傾げてニッコリと笑い返した。
私は黙って、そんな綾子を複雑な気持ちで見つめた。
彼の名は、結城 和馬(ユウキ カズマ)。
私達より5歳年上の消化器外科医。
うちの病院で数年勤務した後、卒業した大学に戻った人物。
彼が以前、綾子と付き合っていた男だ。
同じ医学部を卒業した女医と綾子の二股の末、綾子を捨て自分の親の経営する病院を継ぐために、有能な小児外科医と結婚した男…。
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