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先生…やっと来たぁ…
彼の姿を見て、冷めかけていた胸の鼓動が一気に加速する。
「何してんの?唯、いこ!」
先生を見つめたまま突っ立つ私の手を掴み、綾子が先生の方へと向かった。
「う…うん」
苦しくなる程に心臓がバクバクする。
うわぁ!先生スーツ着てるし!
ヤバイ…
スーツ、似合いすぎる…
感動で、涙でそ。
緊張しながら、前を歩く綾子に隠れ急いで髪を整える。
あっ!口紅落ちてるかも…
こんな事なら、さっきメイク直せば良かった。
指で唇に触れ、口紅を引き直して無かったことに今更ながらに後悔をする。
「先生!来るの遅い!」
先生に近づくなり綾子が言った。
「ごめんごめん。患者さんの事で呼び出しがあって。指示出したりしてたら遅くなった」
「…そうだったんだ。それはお疲れさまです。ずっと待ってたんだよ。ねっ、唯」
綾子が意味有り気にニヤニヤしながら、肘で私の右腕を突ついた。
「休みなのに大変だったね。お疲れさま。…先生」
はにかみながら、私はスーツに身を包む先生を見上げた。
「うん。…お待たせ」
先生は私を見つめ返し、柔らかな笑みをくれた。
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