私に触れる時間 第22話

はじまりの場所

「それそれ。中の出して。それが唯との思いでの曲だから」

「あぁ！CDね。…でも、何で車検証と一緒に？」

「えっ？…だってそれ、曲の内容が遠距離恋愛や不倫。あと別れとか…切ない曲が多いだろ？もしさゆりに見つかったら？『何でこんな曲ばっかり集めてるの？』って事になるに決まってるから。そこなら、絶対に見つからない！」

先生は私を見て、自信ありげにニカッと笑った。

「へぇ…車検証ねぇ。確かに女の人はこんな所を見る事ないからな。…なんか、男の浮気テクニックを見てしまった気がする」

私はわざと何か言いたげな表情を浮かべ、じっくりと先生の顔を見つめた。

「おい、何だよその目は。どうせ俺は悪い男ですよぉ～」　

先生は大きく目を見開いた後、ふて腐れたように口を尖らせる。

「あっ、拗ねた。何も、悪い男だなんてはっきりは言ってないしぃ」

私が先生を見てクスッと笑うと、先生も目を合わせフッと笑った。